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Character Profile

Firefly_Gemini Flash_宮廷占い師が夜の部屋で机の上で光るオーブを使い占いをしてる。オーブはひとつ。アップの絵。 358274 (1).png

アーケルは、シンシア王国に仕える宮廷占い師であり、王ケイゼルの最も古く、最も深い理解者である。
未来を「当てる者」ではなく、時代の揺らぎや人の心の歪みを読み取り、来るべき選択の重さを告げる存在だ。その言葉は少なく、断定もしない。ただ静かに兆しを示し、決断を下すのは常に王自身であるべきだと考えている。

彼は権力を求めない。前に出ることも、英雄として称えられることも望まない。
それでも、王国が揺らぐたび、必ず王の傍らに立ってきた。戦や災厄、政治的混乱の陰で、アーケルは常に「最悪を避けるための沈黙」を選び続けている。

宮廷では寡黙で冷静な人物として知られているが、その内には強い責任感と覚悟を秘めている。
彼が最も恐れているのは、未来そのものではなく、「選ばれなかった可能性が人の心を壊すこと」だ。そのため、決断を急がせず、迷いの中にある者を責めない。迷うこと自体が、まだ人が人である証だと知っているからである。

若き日のアーケルについては多くが語られていない。
ただ、かつて海と風を相手に生きていたという噂があり、その鋭い勘と大局を見る目は、自然と向き合ってきた者のそれだと言われている。真偽は定かではないが、彼が嵐の前に必ず空気の変化を察することだけは、多くの者が認めている。

リョーマを見出し、城へ導いたのもアーケルだった。
その才能の危うさも、闇の深さも理解したうえで、それでも放置できなかった。
王国にとって危険であると同時に、救われるべき存在であると見抜いていたからだ。
彼は光だけで国が守れるとは思っていない。だが、闇にすべてを委ねることの危険もまた、誰よりも知っている。

アーケルの本質は「導く者」である。
答えを与える者ではなく、選択の前に立ち、進む覚悟を問う者。
未来は見えるものではなく、背負う覚悟を持った者だけが掴めるものだと、彼は知っている。

だからこそアーケルは、今日も静かに王国の行く末を見つめ続けている。
誰にも称えられず、誰にも理解されなくとも、
この国が信じる心を失わぬための、最後の柱として。

Episode

Firefly_Gemini Flash_3の城の回廊で夜、星を見て占いをしてる。アップ煽りの絵 358274.png

ある夜、王宮の灯りがすべて落とされたあとも、ひとつだけ消えない部屋があった。
ケイゼル王の私室である。王は机に広げた地図を前に、何も言わず座り込んでいた。国境の報せが続き、決断を誤れば民が傷つくことだけが、重く胸に残っていた。

扉を叩かずに入ってきたのが、アーケルだった。
彼は王の背後に立ち、地図を覗き込みもせず、ただ静かに言った。
今夜は、占いはしません、と。
そして続けて、未来を見れば、王は決断を早めてしまう、とだけ告げた。

その夜、二人は長い時間、ほとんど言葉を交わさなかった。
王は迷い、沈黙し、何度もため息をついた。
アーケルは助言も予言もせず、ただそこに在り続けた。

やがて王が口を開いた。
もし誤ったら、どうなる。
その問いに、アーケルは初めて地図から目を上げ、静かに答えた。
誤ることより、恐れて何も選ばない方が、国は壊れます。

その一言で、王はようやく顔を上げた。
決断はその夜には下されなかった。
だが翌朝、王は自らの意思で道を選び始めた。

後に王は語っている。
あの夜、アーケルに未来を示されていたら、自分は逃げていたかもしれない。
沈黙の中で共に迷ってくれたからこそ、王でいられたのだと。

アーケルは、未来を示さなかった。
それでも、その夜の沈黙こそが、王国を支えた一つの柱となった。

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