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Character Profile

Firefly_Gemini Flash_城の中の庭園で薔薇の手入れをしてる顔のアップ 914898 (1).png

マルセリーヌは、シンシア王国の王女として生まれ育った少女である。
穏やかで上品、礼儀正しく、感情を大きく表に出すことは少ない。その立ち居振る舞いは幼い頃から自然に身についており、王族としての教育を忠実に受けてきたことがうかがえる。

だが、その内側には年相応の好奇心と、強い憧れが息づいている。
城の外に出ることを許されない掟の中で育った彼女にとって、世界は「本で読むもの」「絵で想像するもの」だった。風の匂い、海の広さ、人々の生活の音。それらは知識として知っていても、実感としては存在していなかった。

マルセリーヌは孤独に慣れている。
それは悲観でも諦めでもない。静かな部屋で過ごす時間、ひとりで考え、感じ、想像する時間を当たり前として受け入れてきた。その生活の中で、彼女は小さな変化に敏くなり、心の揺れを大切に扱うようになった。

彼女の優しさは、与えられた役割から来るものではない。
誰かを思いやる気持ちは、自然に湧き上がるものだ。暖炉の精エンバとのやりとりに見られるように、マルセリーヌは弱い存在を守ろうとし、相手の状態に合わせて距離を取ることができる。強く支配するのではなく、寄り添うことを選ぶ性質を持っている。

一方で、彼女は自分の感情を抑える癖がある。
期待してはいけない。
怖がってはいけない。
王女としてふさわしくあらねばならない。
その思いが、胸の奥に小さな緊張として積み重なってきた。

それでもマルセリーヌは、夢を見ることをやめなかった。
海の絵を描き、空の色を想像し、まだ見ぬ世界に思いを馳せる。
それは逃避ではなく、未来への準備だった。

彼女はまだ、何者でもない。
だが、世界に触れる前から「感じ取る力」を持っている。
マルセリーヌとは、守られて育った存在であると同時に、
これから自分の足で世界と向き合っていくことになる人物である。

Episode

Firefly_Gemini Flash_回廊から夕日の海を眺め、外の世界にあこがれる王女。上半身アップの美しい画 40380.png

マルセリーヌが十九歳の春を迎えた頃、城の中はいつもと変わらぬ静けさに包まれていた。
彼女は自室で、海の絵を胸に抱き、くるくると回っていた。
その青い色、その光は、まだ一度も見たことのない世界の象徴だった。

暖炉の中には、小さな精エンバが住んでいた。
火が揺れれば元気になり、強い風が吹けば弱ってしまう存在。
マルセリーヌにとって、エンバは唯一、日々の気持ちを分かち合える相手だった。

その日、彼女は初めて告げる。
成人を迎える記念の日に、一度だけ城の外へ出られることになった、と。
八将軍を迎えるため、港へ行くのだという。

喜びと同時に、恐れが押し寄せた。
外の世界は、本当に優しいのだろうか。
自分は、王女として恥ずかしくない振る舞いができるのだろうか。

翌朝、ほとんど眠れないまま迎えた出発の時。
マルセリーヌは暖炉の前で立ち止まり、エンバに声をかけた。
「戻ったら、またお話ししましょうね」

それは約束であり、同時に自分自身への言葉でもあった。

城門が開く音は、彼女にとって初めて聞く“世界の音”だった。
風は柔らかく、空気は違い、人々の生活の気配が一気に流れ込んでくる。
最初はアーケルの後ろに身を寄せて歩いていたが、次第に顔を上げ、自分の足で進むようになる。

やがて視界の先に、青い光が広がった。
海だった。
絵で見た何倍も、何十倍も広い世界がそこにあった。

その瞬間、マルセリーヌは理解した。
自分の物語が、静かに動き始めたのだと。

この逸話は、彼女が何かを成し遂げた話ではない。
ただ、世界を初めて自分の目で見た日の記録である。
その体験が何をもたらすのかは、まだ語られていない。

だが、この日を境に、
マルセリーヌの中の「夢」は、想像から現実へと変わり始めた。

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