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ChatGPT Image 2025年12月18日 19_06_06.png

Character Profile

131

土の紋章を預かる、シンシア王国八将軍の一人。
フカロは、秩序を何より重んじる将である。感情に流されず、規則と手順を尊び、全体が崩れないことを最優先に考える。その姿勢は冷静で堅牢、時に融通が利かないと評されることもあるが、八将軍の中で「土台」を担う存在だ。

フカロの強さは、派手さとは無縁だ。
戦場でも王宮でも、最前線に立って名を上げることは少ない。だが、彼が整えた布陣や判断がなければ、混乱は何倍にも広がっていた。人の感情が揺れ、場が荒れそうになるとき、フカロは一歩引いた場所から状況を見渡し、最も被害が少ない選択を淡々と示す。

彼は「守る」とは何かを、制度として理解している。
善意だけでは人は救えない。正しさだけでも足りない。秩序がなければ、誰かの善意が誰かを傷つける。フカロはその現実を早くから知り、だからこそ感情よりも規律を優先するようになった。

一方で、彼は自分に厳しい。
秩序を守る立場にある以上、例外を認めない。その厳しさは他人よりもまず自分に向けられる。自分が迷えば、その迷いが誰かの犠牲につながる。フカロはそう信じている。

八将軍の中で、彼は「止め役」だ。
暴走しがちな仲間にブレーキをかけ、場を落ち着かせる。衝突を嫌うわけではないが、衝突が起きる前に防ぐことを選ぶ。そのため、理解されにくい役回りを引き受け続けてきた。

土の紋章は、動かぬ意志の象徴である。
揺れないためではない。
揺れた先で崩れないための覚悟だ。

フカロは英雄を目指さない。
ただ、皆が立っていられる地面であり続けることを選んだ将である。

Episode

132

フカロが秩序に固執する理由は、少年時代の出来事にある。
彼が育った村には、古くから守られてきた掟があった。村の中心にある神を祀る場所へ渡る橋には、渡る順番が厳格に定められており、それを破れば災いが起きると信じられていた。

子どもだったフカロにとって、その掟は重く、息苦しいものだった。
なぜ決まりに従わなければならないのか。
なぜ皆で一緒に渡ってはいけないのか。
そうした疑問を抱きながらも、彼は掟を守る側に立ち続けていた。

ある豪雨の日、その橋は濁流にさらされていた。
危険だと分かっていながら、フカロと数人の幼なじみは掟を破り、同時に橋を渡ってしまう。
その瞬間、橋は崩れた。

混乱の中で、フカロは振り返った。
すぐ後ろにいたはずの親友の姿が、視界から消えていた。
濁流に呑まれ、助ける間もなく、命は失われた。

その場に立ち尽くしたフカロの中で、真実は一つに定まった。
秩序を守らなかった自分の責任。

もし順番を守っていれば。
もし止めていれば。
もし掟を破らなければ。
その問いは、何度繰り返しても答えを変えなかった。

それ以来、フカロは秩序を疑わなくなった。
感情よりも規則を。
その場の善意よりも、長く続いてきた決まりを。
それが誰かの命を守る唯一の方法だと信じるようになった。

後に彼は王宮に仕え、将となる。
土の紋章を選んだのは、動かぬ基準を自分の中に刻むためだった。
二度と、迷いで誰かを失わないために。

フカロにとって、あの日の出来事は過去ではない。
今も胸の奥で、判断のたびに問いかけてくる。
秩序を守れているか。
例外を許していないか。

彼は今日も揺れない。
それは冷酷さではない。
守れなかった記憶を、二度と繰り返さないための、静かな誓いなのである。

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