top of page
ChatGPT Image 2025年12月18日 19_06_06.png

Character Profile

211

コーリックは、薔薇の騎士団に加わる以前から、完成された人格を持つ男である。
寡黙で、感情を表に出さず、必要以上の言葉を使わない。だがその沈黙は閉ざされたものではなく、相手を拒む壁でもない。彼はただ、言葉よりも行動と在り方で示すことを選んできた人物だ。

彼の最大の特徴は、力に対する距離感である。
コーリックは、自身が並外れた力を持つことを自覚している。だからこそ、その力を軽々しく扱わない。誇らず、試さず、見せびらかさない。力は主張するものではなく、必要な時にだけ使うものだと考えている。

山での生活を選んでいたのも、逃避ではない。
静けさの中で、自分を律し、力を制御し続けるための選択だった。人の多い場所、評価や比較が渦巻く場では、力は容易に歪む。そのことを理解しているからこそ、彼は距離を取って生きてきた。

コーリックは他者に対して優しい。
だがその優しさは、甘やかしではない。相手の未熟さを見抜いても、正面から叱責しない。代わりに「選ばせる」。自分がどう生きるかを、相手自身に委ねる。その姿勢は一見冷たく見えるが、実は深い尊重に基づいている。

彼は約束を軽く扱わない。
一度引き受けたことは、必ず果たす。
その代わり、簡単に引き受けることもしない。
言葉を発する前に、自分が背負えるかどうかを徹底的に測る。その慎重さが、コーリックという人物の核にある。

薔薇の騎士団の中で、彼は調整役に近い存在となる。
前に出て鼓舞することは少ないが、判断が揺れた時、最後に場を安定させるのは彼だ。感情が高ぶる局面ほど、彼の静けさは効力を持つ。誰かを止める時も、声を荒らげず、動きで示す。

コーリックは理想を語らない。
だが、理想を否定もしない。
ただ、理想が現実を壊さない位置にあるかを、黙って見極める男である。

強さとは何か。
その問いに、彼は言葉で答えない。
揺れない姿そのものが、答えになっている人物。

それが、コーリックという男だ。

Episode

212

山奥に、誰も揺らすことのできない大木があった。
幹は太く、枝は空を覆い、根は岩を噛み締めるように地に張りついている。
その木は、長い間、山に生きる者たちの間で「動かないもの」として語られてきた。

コーリックは、その木に十年通い続けていた。
毎朝、同じ時間に山を登り、同じ距離で木に向き合う。
力を込め、揺らそうとし、そして必ず何も起きないまま斧を置く。
それでも彼は通うことをやめなかった。

力を誇るためではない。
誰かに見せるためでもない。
ただ、自分の力と向き合うためだった。

ある日、ワトレルとリキハルトが山を訪れた。
薔薇の騎士団への誘いに対し、コーリックは即座に首を横に振った。
山で生きること、静けさを守ること、それが自分の選んだ道だと告げた。

それでも二人が引き下がらなかった時、
コーリックは大木を指した。
「この木を揺らせたら、考える」
それは試練であり、同時に境界線だった。

コーリック自身、揺れるとは思っていなかった。
十年、毎日向き合ってきた木だ。
力だけで動くものではないことを、誰よりも知っていた。

リキハルトが木の前に立った時も、
コーリックは静かに見ていた。
挑発する言葉を投げながらも、その内側では、結果を決めつけてはいなかった。

次の瞬間、大地が低く唸った。
幹がきしみ、枝が揺れ、木の実が一斉に落ちた。
「揺れた」という事実だけが、山に残った。

コーリックは言葉を失った。
驚きではない。否定でもない。
長く自分が立っていた場所が、静かに崩れた感覚だった。

リキハルトは言った。
力は、誇るためではなく、守るために使うものだと。
ワトレルもまた、その言葉に頷いた。

その時、コーリックは理解した。
この二人は、力を暴れさせない。
静けさを壊すために来たのではない。
守るために、揺らす覚悟を持っている。

コーリックは木の実を拾い上げ、杯に見立てた。
そして静かに言った。
「あなたたちの剣には、道がある」

その瞬間、山の静けさは壊れなかった。
むしろ、新しい静けさが生まれていた。

この逸話が語るのは、
大木が揺れたことではない。
揺らす覚悟を持つ者を、見極めた男の決断である。

見出し h5

© 2025 - 2026 INNOCENT MUSIC Inc. All rights reserved.

bottom of page