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With You Joyous Times Are Here Ⅶ
『The Promise of Eglantine』~ある小さな王国の物語~公式サイト


Character Profile

闇の紋章を預かる、シンシア王国八将軍の一人。
ケニーは、正面から光を掲げる将ではない。裏を読み、先を疑い、最悪を想定することで国と仲間を守ってきた策謀家である。沈着で冷静、感情を表に出さず、常に一歩引いた位置から全体を見渡す。
彼の強さは、剣の冴えではなく判断の速さにある。
敵が動く前に罠を察し、争いが起きる前に芽を摘む。時に真実を隠し、時に嘘を選ぶことも厭わない。それが誰かを救うためなら、汚れ役を引き受ける覚悟を持っている。
ケニーは、人に理解されることを期待していない。
むしろ、理解されないことを前提に行動する。正しさが必ずしも歓迎されないこと、善意が誤解を生むことを、彼は身をもって知っている。だから彼は、結果だけを残し、理由を語らない。
八将軍の中では、異質な存在だ。
情に厚い者たちの中で、彼だけが感情に距離を置く。だがそれは冷酷さではない。誰かが疑われる前に自分が疑われ、誰かが責められる前に自分が矢面に立つための距離だ。影に立つことで、光の側を守る役割を選んでいる。
彼の忠誠は、声高ではない。
命令に盲従することも、理想を掲げることもしない。ただ、国が壊れないために何が必要かを考え続ける。その思考は鋭く、時に容赦がないが、そこには一貫した基準がある――守るべきものを、最後まで守る。
ケニーは英雄にならない。
称えられることも、感謝されることも少ない。だが、彼がいなければ避けられなかった破局が、いくつも存在する。人知れず裏で働き、静かに去る。それが彼の流儀だ。
闇将ケニーは、光を否定する者ではない。
光が折れないために、闇に立ち続ける将である。
Episode

### ケニーの逸話
ケニーがまだ村にいた頃、夜明け前に異変を察した。
森の奥に、明らかに不自然な動きがあった。足取り、火の気、人数。
それは偶然ではなく、村を狙った集団の気配だった。
正面から立ち向かえば勝てない。
兵もなく、備えもなく、眠っている村人を起こして説明している時間もない。
誰かが決断しなければ、村は焼かれる。
ケニーは、そう判断した。
彼は村の中央に立ち、ありったけの声で叫んだ。
「火事だ!」
理由も、説明も、猶予もなかった。
人々は混乱し、怒鳴りながらも家を飛び出し、外へ逃げた。
結果として、村人は助かった。
だがその直後、本当に盗賊が火を放ち、村は炎に包まれた。
翌朝、生き残った人々が見たのは、焼け跡と、
そして「最初に火事だと叫んだ男」だった。
ケニーは、何も弁明しなかった。
自分が叫ばなければ、誰も逃げなかったことも、
逃げさせるために嘘を選んだことも、語らなかった。
人々は言った。
あいつが盗賊を招いた。
嘘つきだ。
裏切り者だ。
その日から、ケニーの居場所は村になくなった。
恋人とも、仲間とも、二度と会うことはなかった。
だが彼は、後悔しなかった。
嫌われることより、全滅しなかったという結果を選んだからだ。
もし同じ状況に置かれたら、同じ嘘をつく。
同じように、叫ぶ。
それが自分の役割だと、彼は理解していた。
この出来事は、ケニーの生き方を決定づけた。
正しさよりも、必要性を選ぶ。
理解よりも、結果を残す。
誰かが守られるなら、自分は疑われていい。
闇将ケニーは、そうして生まれた。
光の裏に立ち、
誰にも感謝されず、
それでも国が燃えなかった事実だけを、静かに残す存在として。
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