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With You Joyous Times Are Here Ⅶ
『The Promise of Eglantine』~ある小さな王国の物語~公式サイト


Character Profile
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火の紋章を預かる、シンシア王国八将軍の一人。
ケンタニオの火は、温もりであると同時に、危険でもある。正しく使えば人を守るが、状況を誤れば誰かを傷つける。その両面を理解したうえで、彼はなお火を手放さない。
ケンタニオは、過酷な現実から目を逸らさない。
理想や感情よりも、結果を優先する場面に立たされることが多い。誰かが決断しなければ、多くの人がより大きな犠牲を払う。そうした状況において、彼は必ず前に出る。そして、決断の責任を自分ひとりで引き受ける。
その選択は、常に歓迎されるものではない。
彼の決断は、人を救うと同時に、人を怒らせ、失望させ、時に深く傷つける。説明をすれば言い訳になると考え、弁明をしない。その結果、誤解され、嫌われ、孤独になることも少なくない。
それでもケンタニオは、立ち止まらない。
誰かに感謝されることよりも、被害が最小限で済んだという事実を選ぶ。自分が悪者になることで守れるものがあるなら、それでいいと本気で思っている。彼にとって重要なのは評価ではなく、結果だけだ。
八将軍の中でも、彼はもっとも前線に立つ将である。
危険な役目を引き受け、最も重い判断を背負い、最初に憎まれる立場に立つ。だからこそ、彼の周囲には自然と距離が生まれる。だが、その距離があるからこそ、他の者たちは安心して役目を果たすことができる。
ケンタニオの火は、時に人を燃やす。
だがそれは、無秩序に暴れる炎ではない。守るために、あえて焼く火だ。痛みを伴う選択を、自分ひとりが背負うための火である。
嫌われることも、孤独になることも、彼は受け入れている。
それが自分の役割だと理解しているからだ。
人々は彼の名を好んでは呼ばない。だが、彼がいたから守られた成果だけは、確かに残る。
それが、ケンタニオの運命である。
火を扱い、火に焼かれ、それでも前に立ち続ける将。
Episode
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ケンタニオが若かった頃、ひとつの村で小さな盗難騒ぎが起きた。
数としては取るに足らない出来事だったが、村の空気は一気に荒れた。
疑いは連鎖し、大人たちは互いを責め合い、子どもたちは怯えて黙り込んだ。
広場に集められた子どもたちの中で、視線が一人に集中した瞬間があった。
誰かが責められれば、その者はこの村にいられなくなる。
ケンタニオはそれを、直感的に理解した。
次の瞬間、彼は一歩前に出た。
理由も説明もなかった。
ただ、自分がやったと言った。
その場は静まり返り、やがて怒号が飛び、非難が彼に集中した。
誰もが納得したわけではない。
だが、疑いはそれ以上広がらず、他の子どもたちは守られた。
ケンタニオは、その日から村に居場所を失った。
弁解をすれば、話は長引き、また誰かが傷つくと分かっていたからだ。
彼は何も語らず、背中を向けて村を去った。
後になって、人々はこう語る。
あの時、もし彼が前に出なければ、村は壊れていたかもしれないと。
だが、その声が彼に届くことはなかった。
この出来事は、ケンタニオの生き方を決定づけた。
誰かが決断しなければならない時、自分が立つ。
その結果、嫌われるならそれでいい。
孤独になるなら、それも引き受ける。
彼は今も、同じ選択を繰り返している。
最も重い判断を背負い、最初に憎まれる役目を選ぶ。
人々は彼を恐れ、誤解することがある。
だが、守られた結果だけは、確かに残る。
ケンタニオの火は、こうして鍛えられた。
照らすためではなく、守るために燃える火として。
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