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With You Joyous Times Are Here Ⅶ
『The Promise of Eglantine』~ある小さな王国の物語~公式サイト


Character Profile
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リョーマは、滅びたロザリオ帝国の王子である。
王家に生まれ、幼い頃から統治者としての教育を受け、国と民を背負う存在として育った青年だ。言動は常に落ち着いており、感情を表に出すことは少ない。物事を感覚や勢いで判断することはなく、状況を俯瞰し、最も現実的な選択を導き出そうとする冷静さを持っている。
祖国の崩壊を経験した彼は、信じる心の尊さと同時に、その脆さを知っている。かつて当たり前のように存在していた王国、家族、民との日常は、一夜にして失われた。その経験は、彼から無邪気さを奪い、代わりに重い沈黙と慎重さを残した。
リョーマは、理想を語ることを避ける。美しい言葉よりも、結果と責任を重んじるからだ。その姿勢は、時に冷酷に映り、人の心を置き去りにしているように見えることもある。しかしそれは、同じ悲劇を繰り返さないために、自らに課した厳しさでもある。
高い知性と洞察力を持ち、政治や統治において卓越した能力を発揮する一方で、彼自身は常に孤独を抱えている。王子として生き残ったという事実は、誇りであると同時に、消えることのない重荷でもあるのだ。
リョーマは、世界を壊そうとする者ではない。
だが、失う痛みを知っているがゆえに、簡単に信じることができない青年である。
その葛藤と選択が、物語に深い影と緊張感をもたらしている。
Episode

リョーマがまだ王子として城にいた頃のこと。
彼は毎朝、城の裏門に立ち、名もない使用人や下働きの者たち一人ひとりに目を向けていた。声をかけることはほとんどなかったが、誰が体調を崩しているか、誰の手が震えているかを、黙って覚えていたという。
ある日、配給の手配に不備があり、城下の一角で食糧が行き渡らない事態が起きた。周囲が混乱する中、リョーマは怒ることも弁解することもせず、静かに全体を見渡したあと、自分の名で倉庫を開ける判断を下した。
その場にいた者が理由を尋ねると、彼は短く答えた。
国は数字で守るものではない。人が立っていてこそ国だ、と。
後になって、その判断が王族としては規律を外れた行為だったことが問題になった。
だが、食糧を受け取った人々の中に、感謝を口にする者はいなかったという。
ただ、誰一人として、その後リョーマの前で嘘をつかなかった。
この出来事のあと、彼は人前で同じ判断を二度としなかった。
信じた結果、守れたものと、同時に背負った責任。
それを誰にも語らず、すべてを胸の奥にしまい込んだまま、彼は王子としての顔をより硬くしていった。
リョーマの冷静さは、生まれつきではない。
誰かを守るために選び、二度と繰り返さぬと決めた末に、身につけたものなのだ。
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